2009年04月03日

オバマ大統領就任式を遠くに眺めて(3)

 地下鉄構内にもお祭りに行くような高揚感があった。
「Yes we can can End War!」と書かれたピンクのコスチュームに身を包んだ女性二人から、「オバマは平和を約束する」と書いたピンクのリボンを貰った。
電車を乗り継いで、30分、ポトマック川を越えたクラレンドン駅で下車。
駅前には少しずつビルが建ち始めているが、広い道路の両側にゆとりをもった敷地に立つ家、家。リスが木立から顔を出す。
最近、高級住宅地として、見直されているという。
「最近なの?」と、聞き返したいほどの、立地条件の良い住宅地だ。
徒歩5分でR・Hの母が住む白い家に到着。
 出迎えてくれたヴァージニアとは12年ぶり。
80歳になるというのに美しさはそのままだし、室内もきちんと片づき、呆けているなんて信じられない。
ただ、キッチンで、コーヒーを入れようとして、入れられない姿を見たときに違和感を感じたくらい。
でも自分が80歳になったとき、こんなにきちんとしていられるかしら。

 17時に再び家を出て、タクシーでホワイトハウスに行く。
そのすぐ横にある、ブレアハウス。すべての大統領は就任式の前日、ここに宿泊する。
R・Hは12年前、ここから前夜祭のパーティに出席するクリントンを間近に見たと言う。私たちは難なく、柵の最前に立つことが出来た。
それでも空にはヘリコプターが旋回し、パトカーのサイレンも行き交う物々しい雰囲気。
道路ではアフリカの太鼓を叩き続け歌う人がいる。ブレアハウスまでの距離50m。
こじんまりとした4階建てで2階と3階に電気がついている。
「あそこにオバマがいるのだ」と思うと、不思議な気がする。
家の手前に黒い箱形のバンが1台、その向こう側に4台、尻を向けて後尾ライトをついた車が止まっている。
私たちの前に警官たちが立ってはいるが、緩い感じで、私語を交わしている。
「あのバンに乗るのかしら」と私。
「いや、あれはリムジンじゃないから、前の3台のどれかだろ」とR・H。
と、1階に灯りがつき、玄関ポーチの階段の下に女性が立った。「あっ、出てくる」と、リムジンらしき3台が動き出した。
そちらに目をやった、その一瞬の間に、階段に見えた人影が手前の箱形の車に消えた。
そう、それこそ、どんな襲撃にも耐えられる改造車だったのだ。警官を見ると、「残念だったね」と、ニヤリ。
でも、当然かもしれない。私たちはなんのチェックも受けなかった。50mの距離では、暗殺としようとすれば出来る距離だ。
前夜祭は公私もろもろのパーティがあちこちで行われていて、オバマはどこに現れるかわからない。そのパーティ券も高いものは10万円くらいするらしい。
ホワイトハウスの前では、パレード最終地点の会場が作られ、煌々と灯りがつき、点検作業をしている。オバマを認めない人がアメリカの3割いるというし、KKKのような白人優越主義団体が880もあるという。暗殺の不安は限りなくあるのだ。
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 20日朝、9時前に家を出る。
就任式は11時30分からだが、車規制があり、地下鉄しか使えない。
そして、手荷物禁止。すべて、ポケットに入れるしかない。
地下鉄の駅では乗り慣れない人々がチケット販売機の前で右往左往している。
日本だったら、係員が手伝ってくれるだろうに。そんな配慮はない。
どうにかチケットを手に入れて、プラットホームに降りると人が溢れている。
ほとんどの人が空身状態。アタッシュケースを持っている人を見ると、「まあ、こんな日に仕事なの?」と言いたくなる雰囲気。
なかなか来ない列車。ホームから覗くと、駅手前100mくらいのところに、列車が止まったまま。
やっと、到着して扉が開く。満員といえば満員だが、日本のラッシュにはほど遠い。
乗ろうとすると、「乗れないでしょ!次のにして!」と扉近くの白人女性に言われる。
「そうかなあ、乗れるよね」と私。
「日本とは違うんだから」とR・H。
誰一人、乗れず、乗ろうともせず、扉が閉まり、行ってしまう。
R・Hが言う。「アメリカでは痴漢はいないよ、その場で撃ち殺されてしまうから、犯人が」人間との距離感が違うのだ。
仕方なく、次の列車を待つ。扉が開くと、同じような状態だ。と、端にいた黒人男性が、半歩身を引き、目で、「どうぞ」、私たちは感謝して乗り込む。
目で、「ありがとう」。目で、「どういたしまして」。
黒人とこんなに近距離で、こんなに目と目を合わす機会は、18年前にモザンビークにシナリオ作りに行った時以来。
沖縄にこれだけ行っているというのに。頭の中では、平等、と唱えながらも、黒人は怖いという意識が潜在的に刷り込まれているのではないか。
勿論、英語恐怖症ということも一因だが。目を合わせることが、こんなに心地よいとは。
家族連れ、友人連れ、黒人と白人が半々、そして私のような黄色人種、褐色の人の車内。電車が急停車したり揺れることすら、みんなで楽しんでいる。
「おめでとう!」と誰もが声を掛け合える、そんな空気が漂っていた。
「どの駅で降りようか」と私。
「みんなが降りるところで降りよう」とR・H。
4駅目のファラガット・ウエストで、人波に押し出されるように下車。
地上に出ると、この人波はどこから続いているのだろう、と思えるほど、前も後ろも人だらけ。
その波の中に入り、歩き続ける。
この光景、テレビで見た、第二次世界大戦や、ベトナム戦争が終わったときの、NYの人々の喜びの行列に近い。
人々はオバマに期待している。もう、戦争はこりごり、と思っているにちがいない。
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オバマ大統領就任式を遠くに眺めて(4)


posted by 下島三重子 at 00:34| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これからも拝見させて頂きますね。
楽しみにしています。
Posted by スタービーチ at 2010年04月10日 11:13
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